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【活動記録】川崎ひでとデジタル大臣政務官を訪問 ── 現場で動かしたからこそ言える「証明の次の一手」を、政策の言葉に翻訳して届けてきました

執筆者の写真: 渋谷Web3大学
渋谷Web3大学
11 分前
読了時間: 14分

2026年9月10日、渋谷Web3大学Createコースのメンバー4名で、衆議院第一議員会館に川崎ひでとデジタル大臣政務官を訪ねました。


持っていったのは、スライド12枚と、この半年で現場から持ち帰った一次情報です。ひとつは「終わった実証」、もうひとつは「始まったばかりの本番運用」。フェーズはまったく違いますが、どちらも自分たちの手で動かしたからこそ見えてきたものがあり、それを政策の言葉に翻訳して届けるのが今回の目的でした。


30分の面談と、そのあと議員会館の食堂でメンバーだけで続けた20分の振り返り。この記事では、その両方を活動記録として残します。



訪問メンバー

  • 後藤 裕平(JR東海 総合技術本部 技術開発部 イノベーション推進室)

  • 鈴木 信貴(ファンダムテック株式会社 プロジェクトマネージャー)

  • Nguyen Thu Quynh(1BITLAB 創業者)

  • hajimex(渋谷Web3大学株式会社 代表取締役/学長)


全員がCreateコースのメンバーです。Createコースは、渋谷Web3大学(2023年3月開講、通算40回超・のべ3,000人超)の実践型プロジェクト創発コミュニティで、自治体や大企業の実務者が「学ぶ」だけでなく実際にプロジェクトを立ち上げ、動かしています。


なぜ、川崎政務官なのか

川崎政務官には、これまで渋谷Web3大学のイベントに3回ご登壇いただき、今年2月17日の飯塚市実証中間報告でも基調講演をお願いしました。そのとき政務官がおっしゃった言葉が、今回の訪問の出発点です。


Web3というテクノロジーを目いっぱい推したいわけではない。課題を解決するための方法としてWeb3が最適なのであれば、それを目いっぱい推させてほしい。
最も分厚い壁は、民間と政府の間にある。役所がモノを作る必要はない。

今回は、この2月のお話への「その後の報告」です。Web3をやりたいから訪ねたのではなく、実際に動かしてみて「その先」に何が見えたかを持っていく。だから、Createコースの説明は最小限にして、いきなり本題に入りました。


報告1 飯塚市 DID/VC × 防災実証 ── 終えてみて、わかったこと


4ヶ月で起きたこと

福岡県飯塚市で、日本で初めて自治体と一緒に「DID/VC × 防災」の実証を行いました。渋谷Web3大学・かんがえる防災・Turing Japanの3社連合に、Createコースメンバー6名(JR東海の実務者2名を含む)が加わった体制です。飯塚市からは非資金支援をいただき、補助金は使っていません。


数字でいちばん分かりやすいのは、避難所受付の認証時間です。手書きで151秒かかっていたものが、DID/VCでは69秒。100人が並べば2時間以上の差になります。


もうひとつ、私たちが「One VC, Two Values」と呼んできた構想が、事実になりました。8週間・56問の「答えのない防災クイズ」を完走した人に発行した証明書が、市制20周年式典の避難所受付でそのまま認証に使えたのです。平時の学びの証明が、有事の認証になる。

DID/VCという言葉を知らない人が多く参加してくれて、終わってから「続きはないの?」という声が市職員の耳に届きました。


見えてきた2つの壁

正直に報告したのは、壁の方です。

ひとつは技術ではなく「翻訳」の壁。DID/VCという言葉は、使う人にとってまったく伝わらない。証明書をPDFでダウンロードしようとする、QRコードを拡大しようとする。説明には時間がかかる。ただ、これは次のフェーズで打てる手が特定できた、という意味で前向きな発見でした。


もうひとつは、VCはマイナンバーの代わりにはならない、ということ。基幹システムや管理台帳とつながっていないと、避難所の「入口の効率化」までは届いても、安否確認までは届かない。マイナンバーが担える領域でVCが競う理由は乏しい。両者は補完し合うものだ、というのが実証を終えた私たちの結論です。


そこで問いを変えました。「身分証の代替」ではなく、マイナンバーには担えない領域、VCが固有に効く場所はどこか。


VCが固有に効く場所

6月のメンバーブレストで出てきた5つの仮説(個別避難計画の橋渡し/ボランティア証明/オペレーション短縮/事業者のB2B証明/防災の学びの資格化)を紹介しました。なかでも有力だと考えているのがボランティア証明です。Turing Japanが関わった台湾ではWHO関連の大規模なボランティア証明にVCが使われており、日本でも受け入れ側の安心と本人のキャリア資産の両方になりうる領域です。


もうひとつ、新しいアセットとして挙げたのが、台湾で始まっているDTC(Digital Travel Credential)準拠のパスポートVCです。マイナンバーカードは外国人の安否確認ができない。インバウンドが増え続けるいま、国内身分証が空白になる場所こそ、VCの固有価値が立つのではないか。


ここで政務官から、すぐに整理が入りました。中長期の在留者については在留カードとマイナンバーカードを統合する動きがすでに進んでいるので、VCが効くのはそこではなく、短期の訪日客の領域だと。私たちもまったく同じ認識で、「観光都市から外国人を抜いたら、いろいろな問題が出るだろう」という話になりました。


政策に関わる課題として

私たちが政策側に投げたのは、次の点です。証明は「使われ、認められる場」があって初めて価値を持つ。民間が発行した証明を行政や制度がどう受け取るかが、横展開の生命線になる。


具体的には、個別避難計画のように省庁をまたぐテーマのルールづくり、市町村から社協へ委任されているような分散した運用に対して民間発行の証明を「正」とみなす統一根拠、そして2027年4月施行予定の犯罪収益移転防止法改正です。本人確認が画像送信からICチップ読み取りへ一本化されていく流れの中で、スマホ内の電子証明であるVCの居場所はどこにあるのか。


政務官の返答は明快でした。AIの発達で本人の顔さえディープフェイクで作れてしまう以上、改ざんが極めて難しいVCで直接チェックしていくKYCのあり方は、これから大切になっていくだろうと。厳格化の方向は当然で、その枠組みの中に「マイナンバーが空白になる場所」で使えるデジタル証明の居場所があるか、一緒に考えていきたい。私たちの問題意識と、まっすぐ重なった瞬間でした。


後藤さんからは、実証を通じた実感として「今回は災害を題材にしたが、災害に特化する必要はない。命が関わると分かりやすいから選んだ

だけ」という補足も。政務官からは「コロナのワクチン接種証明アプリもVCの技術を入れているはず」「運転免許証のような証明書系をVC

にしていくとき、中央集権のものがなくなったら本当に本人を証明できるのか、という問いをどう着地させるか」といった具体的な論点が

次々に出て、話は「履歴」に向かいました。ボランティア実績、支援実績、職歴。改ざんされやすい履歴を、改ざんできない形で本人が持ち

歩けること。その器としてのSBTやVC。ここが、次の報告にそのままつながりました。


報告2 ファンダムテックの「共創DAO」パッケージ ── 本番運用で見えた、制度設計の構造


金銭トークンを使わない地域DAO

鈴木さんからは、ファンダムテック株式会社が開発した「共創DAO」パッケージと、それを自治体のプロジェクトで本番採用いただいた事例を報告しました。


このパッケージの最大の特徴は、金銭トークンを一切使わないことです。LINEミニアプリとして提供され、LINEだけで始められます。裏側ではLINEアカウントに対してウォレットが自動発行され、参加者はWeb3を意識しません。


流れはシンプルです。はじめる → スキルを登録する(自薦・他薦)→ イベントやテーマに参加する → 記録が残る(バッジ=SBT、本人のウォレットへ)→ 受け取る(報酬は地域の体験と現物、金銭ゼロ)。たとえば味噌づくりの事業者を支援するテーマに貢献した人には、味噌が

返ってくる。そして「達成した」という証明がSolana上のSBTとして本人に残ります。

設計思想の出自は、母体であるイー・エージェンシー(1995年京都創業)が30年のウェブマーケティング・CRMで確かめてきた「仲良くなると、経済が動く」という実感です。購買データを追いかけるCRMは最初はうまくいっても、どこかで頭打ちになる。ファン化の度合い、

つまり関係性の深まりを促すことで、ホテルなどの顧客が育っていった。それを地域創生に応用したのが、このパッケージです。


金銭トークンを使わない地域DAOアプリを自治体が本番採用し、実際に稼働している。国内でもごく初期の事例だと考えています。開発を担ったQuynhさんの1BITLABは、この仕組みをSaaSとして最初から横展開できる形に作っています。


本番運用したからこそ見えた、3つの構造

ここからが、今回いちばん伝えたかった部分です。鈴木さんは「課題」ではなく「本番運用したからこそ見えた制度設計上の構造」として、3つを話しました。誰の落ち度でもなく、制度の設計に由来する構造です。


1️⃣順序

関係人口を増やす取り組みは、多くが公金事業として組まれます。公金事業である以上、KPIは「事業創出」「新規事業がいくつできたか」に置かれやすい。これは公金を扱う以上、当然の設計です。すると成果責任が運営側に集まり、共創プロジェクトでありながらボトムアップよりトップダウンの動きになりやすい。参加者は、まだ関係のない地域や事業の案件に、いきなり無償で仕事のように関わる形になる。思い入れが育つ前に無償で関わり続けるのは難しく、輪が広がりにくい。


「仲良くなると経済が動く」は、地域創生でも同じ順序ではないか。事業創出の前に「関係を育てる」段階を置き、関係の深まりそのものが成果として数えられる制度設計であれば、自治体側もKPIとして設定しやすいのではないか、という提言です。


2️⃣対価

運営側には委託費が入る一方、参加する都市部のプロは基本的にボランティア。制度上、参加者へ対価を払う枠がありません。そこで「地域の体験+達成証明のSBT」を渡す設計にしましたが、ボランティア達成証明のトークンそのものに価値がある、と社会が認めている状況にはまだない。仮説としては手応えがあるが、参加の動機にはまだなりきらない、というのが現場の実感でした。


換金できない証明が社会的に対価として認められる環境ができれば、こうした共創プロジェクトや地域創生の活動は盛り上がっていくはずです。


3️⃣期間

自治体の施策は単年度で評価されます。しかし関係の質や、関係ができた結果として出てくる経済効果は、年度内に収まるものではありません。複数年度にわたる価値を評価するスキームがない。だからこそ達成証明をパブリックチェーン上のSBTにしました。プロジェクトが終わっても証明は本人のウォレットに残り続け、別の自治体でも、ふつうのビジネスの場でも「こういうことをやりました」と示せる器になりうる。


ふるさと住民登録制度との接続

最後に、少し未来の話として「ふるさと住民登録制度」との接続を提案しました。活動を記録し、それに対して自治体が特典を返す。この制度の骨格そのものが、私たちが現場で「これが必要だ」と望んでいた仕組みです。


現場からひとつ付け加えるなら、記録と資格の手前にある「仲良くなる」段階です。交流会やファシリテーションといった関係づくりを、制度の枠組みの中でKPIとして評価できる設計になれば、事業者も自治体も「まずちゃんと関係を作っていきましょう」と動ける。共創DAOのSBTは「あの時あの場所にいた」「一緒に動いた」という事実の記録なので、登録時に民間の貢献証明が活動実績として扱える余地があれば、この段階を制度の中で見える形にできます。


「関係が先」はまだ仮説です。ファンダムテックはいま動いているプロジェクトの中で順序・対価・期間を検証できるデータを揃え、その結果を制度設計の材料として持ち込みたいと考えています。


対話 ── 政務官からの問い「それは、DAOなのか」

ここで政務官から、本質を突く問いが投げられました。


これまで自分たちが関わってきたDAOは、コミュニティに入り、手元にある資金で何をするかをみんなで相談し、トークンを持つ人が投票して決め、選ばれた案件に資金を渡して動かす、というものだった。今回の仕組みでは、参加者がボランティアに参加した事実がSolana上で証明される。それは分かる。しかし、一人で参加して一人で証明をもらうだけなら、ただのボランティアと変わらない。あえてDAOと呼び、ブロックチェーンでやる意味はどこに出てくるのか。事業を決める決定権はどこにあるのか。


hajimexは率直に「いまはめっちゃ中央集権です」と答えました。地元の事業者の方々は「こういうものがあるから救われる」という気持ちで参加してくれています。ただ、事業を決めているのは自治体で、参加者がコミュニティとして「みんなで考えてやったんだよ」という感覚を持てる構造にはまだなっていない。運営が悪いのではなく、そうならざるを得ない状況ができあがっていて、それをどうするかを考えている段階です。


政務官からは、具体的なアイデアもいただきました。

  • 空き家を宿泊施設に変えるなら、お金がある人はお金を出し、お金がない人はボランティアで貢献してトークンを貯め、その量に応じて優先予約権が来る。それなら参加する意味が分かる。宿泊券をお金で買うか貢献度で買うか、という話なので、金融商品取引法の問題にもならない。

  • 委託費だけでは意味が薄い。「こういう事業をやるから交付金が来た。それをみんなでどう使うか」を決める場がないと、地方創生の事業を誰が考えるのかという話になる。

  • 一拠点に集中せず、いろいろな地域の体験活動を通じてスキルが貯まっていき、より大きな枠の「広域連合の地方創生DAO」のようなものの中で、貯まったスキルに応じて発言権や投票ウェイトに比重がかかる。それは結構面白いかもしれない。


鈴木さんは「そこを、すごくオープンにやっていきたい」と答えました。パッケージは特定の自治体のために作ったものではなく、最初から横展開を前提にしています。


政務官の問いは、私たちが「やってみないと気づけないけれど、気づいてみれば当たり前のこと」に正面から光を当ててくれるものでした。

トークンエコノミーの概念を一度手放して、関係性から始めてみる。その挑戦の意味を守るには、参加者が「決める」側に立てる構造が要る。持ち帰る宿題が、はっきりしました。


川崎政務官への相談と、これから

面談の締めくくりに、2つのことをお願いしました。

ひとつは勉強会の継続です。2件に共通する核心は、民間が発行した証明(VC/SBT)を、制度が価値として受け取る「入口」をどう作るか。飯塚は防災、共創DAOは関係人口。分野は違っても、壁は同じです。Createコースでは他にも自治体・大企業の実務者が手を動かす案

件が並走していて、それぞれが本番の一次情報を持ち帰ってきます。「現場で動かした人が、政策の言葉に翻訳して持ち込む場」として、Createコースの活動そのものを勉強会に育てていきたい。次の周年イベントでもこうした発表の場を設け、政務官にもお話しいただければ、とお伝えしました。


もうひとつは、次に出てくるものを実証できる自治体との出会いです。ここは常に政務官の耳に入れていきます。


議員会館の食堂で ── メンバーだけの振り返り

面談後、議員会館の食堂に移動して、メンバーだけで20分ほど話しました。9月に入ったばかりの平日、社会科見学の小学生たちで食堂はいっぱいで、こんなに混んだ議員会館は初めてでした。



いちばん盛り上がったのは、後藤さんが紹介してくれたDecidim(デシディム)の話です。ヨーロッパで広く使われている住民参加のプラットフォームで、バルセロナ市では、住民が「ここにベンチがあったらいい」「この公園をこうしたい」と提案し、投票でランクが高かったものに対して市が計上した予算枠が充てられ、実際に実行される。


政務官との対話で見えた「参加者が決める側に立つ構造」を、この仕組みに重ねると、次の一手が具体的になります。交付金の一部を「関係人口も含めた参加者が投票して使い道を決める枠」にする。既存の事業を助けて貢献を積み、その証明を持つ人が新規施策をDAO的に育てる。町にまだ住んでいなくても、貢献の記録をもって「市民と同等の」投票権を持てる。それはかなりDAOなのではないか、という話になりました。外部資金を入れないことがDAOなのではない。誰が、どう決めるかがDAOなのだと。


もうひとつ確認できたのは、いろいろな問題が見えた、ということは、伸びしろしかない、ということです。政務官の助言どおり、イベントや参加賞のようなライトな入口から関係を育てる方向に倒していくこと。今回見えたことをもとに他の自治体へのカウンター提案を考えること。「共創DAO」という名前そのものを含めて、本来のDAOの定義を疑いながら設計し直すこと。そしてビジョンと売上を分断させず、売上にビジョンを連れてくること。


小学生の見学は国会議事堂までで、議員会館まで来ることはまずありません。私たちも、ここに来るのは日常ではない。だからこそ、現場で動かして持ち帰ったものを、この場所に届け続けることに意味があると思っています。


おわりに ── 「Be the First Penguin」

政務官の事務所の壁には、自民党青年局のポスターがありました。「Be the First Penguin」。


日本で初めて自治体と一緒にDID/VCを防災で動かしたこと。金銭トークンを使わない地域DAOを自治体が本番採用し、動かしたこと。どちらも、やってみたからこそ壁にぶつかり、やってみたからこそ次の一手が見えました。壁は透明になりました。


渋谷Web3大学Createコースは、これからもこうした一次情報を持ち帰り、政策の言葉に翻訳して届けていきます。自治体の方、企業の実務者の方で「うちでも実証してみたい」「この構造、うちにも心当たりがある」という方は、ぜひお声がけください。次の勉強会で、お会いしましょう。







渋谷Web3大学株式会社(Shibuya Web3 University Co., Ltd.)

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