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【イベントレポート】-Season2- 第9回目リアルイベント「 Web3 × 終活 」 ── 今こそ、死のインフラを再設計するときが来た。 ──

  • 執筆者の写真: 渋谷Web3大学
    渋谷Web3大学
  • 2 時間前
  • 読了時間: 10分

2026年 5月20日水曜日開催

渋谷Web3大学 -season2- 第9回目リアルイベント(通算第40回目)

「Web3 × 終活」── 今こそ、死のインフラを再設計するときが来た。 ──



今回のテーマは「Web3 × 終活」。


最先端テクノロジーを語る場でありながら、今回踏み込んだのは「どう生きて、どう死ぬか」という、誰もが心の奥底に抱えながら、普段は言葉にできずにいる問いでした。会場参加型としてMentimeterを使い、参加者一人ひとりの声を拾い上げながら、共に考える時間を作りました。


会場では、伝統的な葬儀の現場を知り尽くした実務家と、Web3でお墓を再設計する起業家という、まさにアナログとデジタルの両極から「死」を見つめる2名のゲストをお迎えし、それぞれの専門知が交差する濃密な議論が展開されました。


【Mentimeter ①】「あなたは自分の死について考えたことがありますか?」


  

「よく考えている」6名、「少し考えたことがある」8名、「ほとんどない」2名、そして「全くない」はゼロ。


誰もが心のどこかで向き合っている、しかし普段は口に出せないテーマが、イベントの開始早々、会場全体の「自分ごと」として共有されました。死を考えることは、決して暗いことではなく、よりよく生きるための入り口である ── そんな空気が、最初の問いかけだけで生まれていきました。



和田 裕助さん

有限会社ワイイーワイ 代表取締役

「死の現場から見えるもの ── 終活の課題と再設計」




江戸末期から続く葬儀屋の5代目でありながら、ボストン大学工学部を卒業した稀有なエンジニア。Adobe Photoshopのエンジン開発やフライトシミュレーター開発に携わった経歴を持つ和田さんは、「技術」と「死」の両方を知る立場から、終活業界の構造的課題に鋭く切り込みました。


1990年に約2兆円規模だった葬儀産業は、死亡者数が82万人から160万人へとほぼ倍増しているにもかかわらず、現在は1.8兆円規模へと縮小。一人あたりの単価は240万円から110万円へと激減しています。家族葬の普及とネット広告(最大5割の手数料搾取)が経営を圧迫し、一部の業者は湯灌(ご遺体を清める儀式)を本来1回で十分なところを3回、4回と重ねるなど、不要なオプションを多重計上する「ブラック葬儀屋」化が進んでいる、と和田さんは現場の実態を率直に語りました。


これは業界全体が悪いのではなく、リテラシーの非対称性が生み出している構造問題です。プロですら他社の見積もりが読めない世界で、消費者が読めるはずがない。だからこそ、信頼できる人からの紹介で、必ず3社相見積もりを取ってほしい




さらに和田さんは、現代特有の重大課題として「デジタル遺産」と「お墓の継承問題」を指摘しました。


亡くなった方のスマホがロックされて開けない、サブスクリプションが解約できず課金され続ける、メールアドレスに紐づくアフィリエイト収益が相続財産として争いの種になる ── こうした事例は、もはや特殊なケースではなくなっています。

そして、すぐに実践できる極めてアナログな知恵も披露されました。


「マスターパスワードはスクラッチカード(Amazonで購入可能)の銀紙の下に書いて、家族にだけ場所を伝えておく。何かあったらコインで削れば見える。デジタル時代の最後の砦は、案外こうしたアナログにあるんです」


お墓については、相続税が非課税であるがゆえに相続放棄ができないという、知る人ぞ知る落とし穴も指摘。離檀料が100万円〜200万円請求されるケースもあり、無縁墓の急増は、こうした制度のひずみと無関係ではありません。


人生における絶対的な真理は二つだけ。必ず死ぬということと、死ぬまで生き続けるということ。だからこそ、アナログとデジタルの両面で『いつでも安心して旅立てる準備』をしておく ── それが、自分のためであり、残される家族への最大の愛情です


20分の登壇で示されたのは、葬儀業界への批判ではなく、「知っていれば防げる悲しみ」を一つでも減らしたいという、現場を150年見続けてきた家系ならではの誠実な使命感でした。



【Mentimeter ②】“理想の死”とは何ですか?

最も多く集まった言葉は「家族に迷惑をかけない」。


他にも「ありがとうと言いながらその時を迎えられる」「好きな人に看取られる」「後悔のない死」「満足した状態で死ぬこと、家族、健康、社会になした事」「悲しいけど良かったなと家族が思えること」── 日本人特有の、他者への配慮と感謝に満ちた、温かくも凛とした理想が並びました。


これらの言葉の奥にあるのは、「自分ひとりの死」ではなく、「関係性の中で迎える死」という日本的な死生観そのもの。そして、その理想を実現するためにこそ、終活の設計が必要なのだと、会場全体が静かに頷く瞬間でした。




藤澤 哲雄さん

スマートシニア株式会社 代表取締役

「お墓テックの挑戦 ── Web3で生きた証を未来へ」



アメリカでビットコインがまだ1ドル前後だった時代に出会い、2019年からNFT・ブロックチェーンに深く関わってきたエンジニア出身の藤澤さん。「身銭を切って学んだ」というブロックチェーンの本質 ──


「一度記録したら絶対に消えない」 ── という特性が、お墓や供養という領域と本質的に相性が良いことに気づき、現在の事業を立ち上げました。


日本の供養文化は、いま大きな転換期を迎えています。新たに一般墓を建てる人はわずか17%。樹木葬や合葬墓が約70%を占め、お墓は急速にコンパクト化しています。「東京で一軒家がマンションに変わったのと同じことが、お墓の世界でも起きている」と藤澤さんは語ります。


スマートシニア社が提供するのは、QRコードやICチップを活用し、故人の思い出、声、動画、レシピなどのデータをブロックチェーン上に永久保存するサービス。クラウドと違い、運営会社が消えても残り続け、改ざん不可能で、管理費もフリー。藤澤さんはこれを、漫画『ワンピース』に登場する歴史を石に刻んだ「ポーネグリフ」になぞらえました。


これまで100年後まで名前を残せたのは、ノーベル賞受賞者や有名人だけ。Web3の時代になって、誰もが『生きた証』を未来に残せる選択肢を持てるようになった ── これが本当に大きな変化です


実際の利用事例として紹介されたのは、亡くなったペットの動画や鳴き声、お母さんの手書きレシピをブロックチェーンに刻み、お墓参りの後に家族でそのレシピを再現して食卓を囲む ── そんな温かい光景でした。テクノロジーは、必ずしも壮大な何かを残すためのものではなく、「日常の愛おしさ」を未来に届ける手段にもなる、ということです。


そして話題は、アメリカ最先端のさらにその先へ。

イーロン・マスク氏(Neuralink)、サム・アルトマン氏(OpenAI)、ジェフ・ベゾス氏(Altos Labs)といったテック富豪たちが、巨額を投じて進めている「デジタル不死(意識のアップロード)」「細胞の若返り」のトレンドが紹介されました。イーロン・マスク氏は「20年以内に意識をバックアップし、ロボットやクラウドに転送できる時代が来る。死は決定的な終わりではなくなる」と公言しています。


しかし藤澤さんは、ここで重要な問いを投げかけます。


もし本当に死ななくなったら、何が起きるか? 時間という価値が消失するんです。『今日やらなくても、100年後でいい』が許される世界では、人生の輪郭そのものが崩壊する。そして『選ばれる者と選ばれない者』の格差が永続化し、生物としての多様性も失われる


東京大学・小林武彦教授の生物学を引用しながら、「死はバグではなく、生命プログラムにあらかじめ組み込まれた多様性の仕組み」と藤澤さんは強調しました。哺乳類の中で人間だけが、生殖活動を終えた後にも数十年の「エキストラタイム」を持つよう進化した。それは、次世代への継承という第二・第三のステージのために用意された時間である、と。


だからこそ、エゴ(自我)に駆動される第1ステージのあと、継承の第2ステージ、そして尊厳ある死の第3ステージへと、自分の魂や教訓をどう次世代に手渡すか ── ここに人生後半の本当の価値がある


エンジニアでありビジネスマンでありながら、禅の世界観にも深く通じた藤澤さんが最後に引用したのは、松尾芭蕉の一句。


「やがて死ぬ景色は見えず蝉の声」


「エゴを手放し、ただ一心に今を生き切る。死との距離を測りすぎず、自然の流れと一体化していく ── テクノロジーが進化する時代だからこそ、この感覚が大切になると思っています」




【Mentimeter ③】あなたの“何を”未来に残したいですか?


「楽しかった思い出」「自分がやってよかった経験」「人生の記録」「人生の教訓」「社会課題に対してある一定程度の成果、道筋をつける」── 一方で、「残したいものはない」「特にない」「何もない」という潔い声もありました。


この「残さない」という選択に対しても、藤澤さんはこう返します。


残すか残さないか、その『チョイス(選択肢)』自体が、Web3によって初めて個人にもたらされたこと ── ここに最大の価値があるんです


そして和田さんは、興味深い洞察を加えました。「『残したくない』と言う方ほど、実は子どもや教え子に、知らず知らずのうちに自分の生き方や考え方を継承していたりするんですよ」── 物理的に残すかどうかと、本質が伝わるかどうかは、必ずしも一致しない。それもまた、終活が教えてくれる人生の真実でした。




パネルディスカッション

「死は、技術で救えるのか?」




【Mentimeter ④】終活の最大の課題は何だと思いますか?


「家族・継承問題」が圧倒的多数の5票。「費用の不透明さ」「心理的不安」「その他」がそれぞれ1票。「その他」と回答された参加者からは、「全体的に何をやっていいか分からなすぎて、どこから手をつけていいのか分からない」という、多くの人が共感するであろうリアルな声が共有されました。


和田さんは、「AIで葬儀費用を調べる方も増えていますが、業界がブラックボックス過ぎて、実際の見積もりと10倍近くズレることがある。AIは便利だけど、終活の領域では鵜呑みにせず、必ず生身の専門家に相談してほしい」と、テクノロジーの限界と人の知恵の役割について語りました。


【Mentimeter ⑤】テクノロジーで解決できると思うか?


「できる」3票、「一部できる」5票、「できない」はゼロ。会場全体が、テクノロジーへの期待を共有していることが明確になりました。


藤澤さんは、「最終的にはWeb3とスマートコントラクトの組み合わせによって、『資産の移行』や『生きた証の証明』が極めて滑らかになる未来が来る」と語り、和田さんもこれを受けて、「毎年55兆円が動く日本の相続市場において、改ざん不可能なブロックチェーンによって『死をトリガーとして、自動的に遺産やデジタル資産が次世代へ安全に受け継がれる仕組み』は、確実に実現可能になる」と強い確信を示しました。


一方で、「死ななくなった世界が本当に幸せか?」というパネリスト同士の対話は、極めて哲学的な領域へと進んでいきました。藤澤さんの「死なないテクノロジーが実現したら、一、二回は試してみたい。でも最終的には『キルスイッチ』が欲しくなるかもしれない」という率直な言葉に、会場には深い共感の沈黙が広がりました。


自由とは、選べることである。生きることも、死ぬことも、残すことも、残さないことも。Web3とAIが切り拓いていくのは、これまで「選べなかったこと」を、一人ひとりが選べるようにする世界 ── そのことが、改めて確認された時間でした。



今回の話に、正解はありません。


『自分の死を、誰かに任せていないか?』

テクノロジーは、あくまで手段です。


でも、"どう生きて、どう死ぬか" ── これだけは、私たち人間にしか設計できません。

死を考えることは、生を深く問い直すこと。


そして、自分の生と死を自分で設計することは、家族と未来世代への、最も静かで力強い愛のかたちでもあります。


渋谷Web3大学は、これからも「テクノロジー × 人間性」の最前線で、誰もが自分の人生を自らデザインできる社会を、皆さんと一緒に作っていきます。


今回もとても熱く、深〜い回となりました。

ご参加いただいた皆様、ゲストの和田さん・藤澤さん、本当にありがとうございました!


【Information】

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【次回のイベント】

次回は渋谷Web3大学 -season2- 第10回目リアルイベント(通算第41回目)

2026年6月24日水曜日開催 

【渋谷Web3大学 × WeWork 特別コラボセミナー】

Web3 × コミュニティ × 地方創生 〜次世代のDAOをデザインせよ〜





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